広島国際大学

薬学部 薬学科

高度な専門知識と技能を持ち、豊かな人間性を備えた新しい時代の「薬剤師」の養成

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薬品合成化学研究室  — 池田 潔 教授 —

Laboratory of Synthetic Organic Chemistry

現在, シアル酸誘導体を創薬シーズとするパラインフルエンザ1型ウイルス(hPIV-1)シアリダーゼ阻害剤の合成研究を進めている。さらに, 以下の研究テーマについても精力的に取り組んでいる。これらの研究の一部は静岡県立大学薬学部との共同研究により行われている。


主な研究テーマ:

    シアル酸を中心とする生物活性糖類の合成研究

    フルオラスケミストリーの合成化学への応用研究

    シアル酸を含むバイオイメージング剤の開発研究

    糖類を素材とした新興・再興感染症の治療薬の合成研究


研究内容:

シアル酸 (sialic acid) は動物の体内に広く分布する炭素9 個の骨格から成るノイラミン酸 (5-amino-3,5-dideoxy-D-glycero-D-galacto-nonulsonoic acid) のN-アシル誘導体の総称である。現在までに,数十種類のシアル酸が天然に見出されている。主にN-アセチルノイラミン酸 (Neu5Ac, 1a),N-グリコリルノイラミン酸 (Neu5Gc, 1b),5位にアミノ基がないシアル酸としてケトデオキシノノン酸 KDN (2-keto-3-deoxy-D-glycero-D-galacto-nonic acid, 1c) の3種類がシアル酸の基本構造とされている。

生物活性を指標とした新規機能性分子の創製研究

シアル酸は生体内において単体としての他,糖蛋白,糖脂質,糖ペプチド等の構成成分として細胞膜表面のオリゴ糖の末端に存在し,細胞間の情報伝達や細胞認識,生体内のレセプターの必須構成成分として多くの生命現象に深く関与している。さらにシアル酸を含む糖鎖は, 細胞の癌化や分化に伴ってその糖鎖の構造が変化することや炎症反応において細胞間接着現象におけるリガンドとして機能することが知られている。インフルエンザウイルスは流行性感冒の病原菌ウイルスであり,人畜共通伝染病として世界規模の大流行を引き起こし, シアリル糖鎖受容体との関係が最も詳しく分かっている。近年,新興感染症であるトリインフルエンザウイルス (H5N1) 型や豚インフルエンザウイルス(H1N1) 型に代表される新型インフルエンザウイルスの世界的な感染拡大が懸念されている。現在,ワクチンの開発は行われているが変異が激しく,病原性の高いウイルスには実用的効果が得られていない。

病原性ウイルスの一つであるヒトパラインフルエンザウイルス(hPIV)はかぜ症候群の原因ウイルスの一つで, 小児の初期感染において気管支炎や肺炎などの重篤な症状を引き起こす。hPIVはHN糖蛋白質(hemagglutinin-neuraminidase) を介して標的細胞膜上のシアル酸を含む複合糖脂質に吸着し感染後, 増殖, 細胞の末端に位置するシアル酸との結合を切断して出芽すると考えられている。しかしながら, hPIVの詳しい感染機構は解明されておらず,ウイルス感染を効果的に予防するワクチンや治療薬は開発されていない。また, リレンザやタミフルはhPIVに有効ではない。

シアル酸はインフルエンザウイルスの感染,伝搬に深く関与しており,シアル酸誘導体をリード化合物とする治療薬の開発は創薬研究の観点から非常に興味が持たれている。

このような背景から有効な治療法のないhPIV-1に対する治療薬の開発を目的にシアル酸誘導体の合成研究を展開してきた。その結果, hPIV-1シアリダーゼに対して世界で最も強いシアリダーゼ阻害活性を持つ2-チエニルシアル酸誘導体6の創出に成功した。